【山形県遊佐町】鳥海山大物忌神社 蕨岡口之宮|静かで神秘的な出羽国一之宮の里宮
鳥海山大物忌神社は、霊峰・鳥海山そのものを御神体とする山岳信仰の神社で、山頂の本社と、麓に鎮座する二つの里宮(吹浦口之宮・蕨岡口之宮)から成り立っています。
本記事では、山麓に位置する蕨岡口之宮の静かで落ち着いた境内、参拝の流れ、見どころ、文化財、アクセス情報をわかりやすくご紹介します。
鳥海山大物忌神社 蕨岡口之宮 概要
- 鎮座地:山形県飽海郡遊佐町上蕨岡字山下
- 御祭神:大物忌大神(鳥海山の神)
- 創祀:欽明天皇25年(西暦564年)、1400年以上前
- 歴史:延喜式神名帳に名神大社として記載、出羽国一之宮
- 構成:山頂本社・吹浦口之宮・蕨岡口之宮
蕨岡口之宮とは|山麓の静かな出羽国一之宮
蕨岡口之宮は鳥海山の西側、蕨岡地区に鎮座する里宮です。吹浦口之宮が日本海側の参拝入口として機能してきたのに対し、こちらは山中ルートの口之宮として、古代より鳥海山信仰の重要な拠点となってきました。
参拝者がほとんどいないため、境内は静寂に包まれ、苔むした石段や落ち着いた建物が、長い歴史と鳥海山への信仰心を静かに伝えてくれます。
御祭神は大物忌神(倉稲魂命・豊受姫神と同神)で、第十二代景行天皇の時代に創祀され、欽明天皇25年(西暦564年)に鳥海山山頂に鎮座したと伝わります。貞観4年(862年)には官社に列し、延喜式神名帳には名神大社として記載されました。歴代天皇や八幡太郎義家、庄内藩主など多くの武将や庶民から崇敬を受けてきた由緒ある神社です。
境内を歩く|参拝の流れと見どころ
随神門と参道

境内の入口には、堂々とした二の鳥居(木造明神鳥居)が建ち、その先に随神門が構えています。随神門の左右には、神様を守る武神「随身」が安置され、神域を静かに見守っています。上部には荘内藩主酒井忠器公の寄進による「出羽一之宮」の扁額がかかっています。
木々に囲まれた参道を進むにつれ、周囲の空気が次第に変わり、自然と心が落ち着き、神聖な場所へ足を踏み入れたことが感じられます。

随神門をくぐると、左手に手水舎があります。
ここでは、参拝の前に手や口を清め、心身を整えてからお参りすることができます。
神楽殿と拝殿

随神門をくぐってまっすぐ進むと、右手に朱色が美しい神楽殿があります。
この神楽殿では、地域の伝統行事として、山伏の修行や通過儀礼と深く結びついた芸能「蕨岡延年」が奉納されることがあります。
蕨岡延年は山形県指定の無形民俗文化財にも指定されており、参拝とあわせて土地に根付いた文化や信仰の歴史を感じられる場所です。
本殿

参道をさらに進んでいくと、三の鳥居が見えてきます。
この鳥居をくぐると、正面には南向きに建つ本殿が現れ、いよいよ神社の中心部に到着します。

本殿は桁行三間、梁間六間、切妻造銅板葺屋根の豪壮な建物で、伊勢神宮の神明造を系譜とする建築様式です。明治29年(1896年)に地元大工の手で造営され、昭和28年(1953年)には参拝利便性向上のため東の山手から現在地に移築されました。本格的な格式を感じることができる豪壮な社殿は、随身門・神楽殿と共に平成19年(2007年)に国の登録有形文化財に指定されました。
宝篋印塔

境内には山形県遊佐町指定有形文化財の宝篋印塔も見ることができます。
江戸時代後期の寛政12年(1800年)、酒田の豪商・本間光丘が自らの極楽往生を願い、生前供養(逆修)として建立しました。高さ約5mの威風堂々とした石塔からは、当時の本間家の財力と鳥海山への篤い信仰が感じられます。
荘照居成神社

こちらは遊佐町指定有形文化財の荘照居成神社です。
江戸時代末期、庄内藩の転封を阻止するために尽力した矢部駿河守定謙への感謝と報恩の思いから、弘化3年(1846年)に地域の人々によって建立されました。
社殿は一間社流造の銅板葺で、細部まで丁寧に造られた美しい建築が特徴です。彫刻は上寺の西之坊融朝の作とされ、庄内地方らしい意匠が随所に見られます。
参拝時の注意点と御朱印情報
- 神職は常駐していません。
- 御朱印は吹浦口之宮でまとめていただく形式です。(蕨岡口之宮では、御朱印の授与は行われていません。)
蕨岡口之宮のアクセス・マップ
| 手段 | アクセス内容 |
|---|---|
| 電車 | JR羽越本線「遊佐駅」または「南鳥海駅」から車で約10分、タクシーで15分程度。 |
| 車 | JR遊佐駅から約10分、日本海東北自動車道「酒田みなとIC」から約20分 |
駐車場情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 駐車場 | あり(無料) |
| 台数 | 普通車 数台分 |
| 場所 | 境内入口付近 |
| 注意点 | 冬季は積雪・凍結に注意 |
まとめ|静かで神秘的な鳥海山信仰を体感
まとめ|鳥海山の神を里で仰ぐ、静寂に満ちた祈りの場
鳥海山大物忌神社 蕨岡口之宮は、霊峰・鳥海山そのものを御神体とする信仰を、山麓から大切に受け継いできた里宮です。境内には長い歴史と人々の祈りが静かに息づいています。
随神門をくぐり、木々に包まれた参道を進み、本殿へと至る一連の流れの中で、鳥海山信仰の奥深さや、地域とともに歩んできた神社の姿を自然と感じ取ることができました。神楽殿で伝えられる蕨岡延年や、宝篋印塔・荘照居成神社といった文化財も、この地の信仰と暮らしを今に伝える大切な存在です。
静かな環境で心を落ち着けたい方、山岳信仰や出羽国一之宮の歴史に触れたい方には、特におすすめの神社です。喧騒を離れ、鳥海山の神を身近に感じながら、ゆっくりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
